PENDANT
1話 しゃべる猫!?
「あの子と遊んじゃダメよ!」
子供を持つ母親は誰もが、いつしか彼女を怪訝するようになった。彼女がどんなに必死に誤解を解こうとしても、話すら聞いてもらえやしない。
――どうしてこんなことになっちゃったの……?
いくら考えても、答えなんか出てこなかった。
彼女は何も知らなかった。自分の力も、そして、私たちの国マジックフィールドのことも――。
風歌は誰にも遊んでもらえず、独り、自分の部屋のベッドに寝そべっていた。肩にかかるかかからないかくらいの茶色い髪に、吸い込まれそうなほどに澄んだやさしい緑の瞳。
彼女の名前は葉月風歌(はづき ふうか)。見た目は、中学生にも間違えそうなほど子供っぽい。とても、私と同じ16歳だなんて思えないわ。
そしたら、どこから入ったのか、1匹の黒猫がひょいとベッドに乗り、お行儀よく座って彼女を見つめた。
それに気付いて、風歌はあわてて起き上がって、どこから入ってきたのだろうと辺りを見回した。
窓にもドアにも鍵がかかってから、普通なら入ることはできない。普通ならね。
風歌は、答えるはずのない黒猫に話しかけた。
「あなた、どこから入ってきたの?」
普通は返ってくることはないんだけど、この猫の場合は違った。
「すみません。とりあえず入らないことにはお話ができないと思い、お邪魔させていただきました」
その言い方は誠実そうだったけど、やっぱり猫がしゃべったんだもの、普通は驚くわ。
「……えっ、ええ!? 猫が……しゃべったぁ!?」
「あ、すみません。驚かすつもりはなかったのですが……」
相変わらずルネは淡々と話すけど、つもりはないっていっても、驚くものは驚くわ。かわいそうに、あまりのショックにまだ口をパクパクさせてるじゃない!
「私はルネ。ご覧のとおり黒猫です。その言葉をなぜあなたが理解できるのかと言うと……それはあなたが『魔法使い』だからです」
ルネったら、また風歌を追い詰めるようなこと言って……。ほかに言い方ないのかしらね。それでも、ルネは容赦なく続ける。
「その証拠に、普通の人には、通常の『猫の鳴声』にしか聞こえません。あなたの身の周りで、何か変わったことは起こりませんでしたか?」
彼女みたいに未熟な魔法使いは、魔力のコントロールがうまくできないから、ひょんなときに発動したりしちゃうものなの。
(…………変わったこと……)
風歌は、しばらくは混乱してたみたいだけど、少しは落ち着いたみたいで考えを巡らせていた。
(――あ、そういえばあった。確かあれは、私がみんなとかくれんぼをして遊んでたとき、遠くまで行き過ぎて、崖から足を滑らせてしまって――絶対死ぬと思った。でも、なぜかは知らないけど、やさしい風が吹いて、ちょうどクッションのようになって……助かったんだっけ。……でも、私はそのせいで……)
風歌はの思考はそこで途絶えた。辛い記憶を引き出してしまったから……。
彼女はこのことが原因で独りぼっちになってしまった。あの崖の高さなら死んでいたはず。なのに、風歌は生きていた。かすり傷1つない。そのことを子供たちから聞いた母親は気味悪がって、以来風歌と遊ばせなくなった。ひどい話よね。「魔法使い」と「化け物」を一緒にしないでほしいわ!
「お気の毒でしたね」
「えっ!?」
ルネが妙なところで妙なことを言い出したから、風歌は驚いた。
「私がお仕えしているお方はすべてを知っておられます。私と一緒に来てください。悪いようにはいたしません。私たちの国の住人は全員が魔法使いなのです。新しい魔法使いのお友達ができると思いますよ」
そう。私たちの国は、昔、彼女みたいに迫害された魔法使いが集まってできたって言われてるの。きっと、みんなやさしくしてくれるわ。
「でも……私の友達はここにもいるから……」
「本当にお優しい方なんですね。なにも、ここへ2度と戻れないわけではありません。居心地が悪ければ、お帰りいただいても結構ですし。その際は私がお送りいたします」
「……そ、そうですか? そこまでおっしゃるのなら……私、あなたと一緒に行きます」
風歌は最後に小さな声で、ここにいても辛いだけだし……、と呟いた。
「わかりました。では、早速参りましょ――」
「……待ってくださいっ」
ルネが最後の言葉を言い終わらないうちに、風歌が口を挟んだ。
「……はい? 何でしょう?」
ルネは、どうしたんだろうって顔で風歌を見た。
「その前に……やっぱりお別れしてきたいの」
「あ、そうですね。いいですよ。では、私はここでお待ちしていますので」
ルネの返事を聞くと、風歌の顔に安堵感が戻った。
「じゃあ、行ってきまぁーす!」
風歌はそう言いながら、元気よく飛び出していった。
ここからが問題よね。母親は風歌が必死に訴えるのも構わず追い出そうとするから、目的の相手に会うことすらできない。
仕方ないから、風歌は手紙に書いたわ。母親がそれをやすやすと子供に渡すのを許すとは思えないけど。
案の定、母親は手紙を渡すことを拒み、そして、その手紙を破ろうとした。
間一髪で、玄関のようすを隠れてみていた子供が止めて、なんとか中身は読めたみたい。そのあとは、海水のようなしょっぱい空気が漂ってたけど……。
ほかも大体そんな感じ。とりあえずは一安心ね。
ん? そういえば、私の自己紹介がまだだったわね。私は水城海(みずき うみ)。このとおり、物語の進行をお手伝いしてるわ。私もこのあと、物語にも実際に登場するからよろしくねっ!
ねえ。ところで、もう1つ大事なこと忘れてない? この国を出てくんだったら、両親にも言わなきゃいけないでしょ。
……さあ、どうするのかしらねぇ。じっくり見させてもらうわ。
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